August 25, 2009

チューインガム一つ

 チューインガム一つ
                   3年 村井安子

  
   せんせい おこらんとって
   せんせい おこらんとってね
   わたし ものすごくわるいとこした
   わたし おみせやさんの
   チューインガムとってん
   1年生の子とふたりで
   チューインガムとってしもてん
   すぐ みつかってしもた
   きっと かみさんが
   おばさんにしらせたんや
   わたし ものもいわれへん
   からだが おもちゃみたいに
   カタカタふるえるんねん
   わたしが1年生の子に
   「とり」いうてん
   1年生の子が
   「あんたもとり」いうたけど
   わたしはみつかったらいややから
   いややいうた
   1年生の子がとった

   でも わたしがわるい  
   その子の百ばいも千ばいもわるい
   わるい
   わるい
   わるい
   わたしがわるい 
   おかあちゃんに
   みつかれへんとおもとったのに
   やっぱり すぐ みつかった
   あんなこわいおかあちゃんのかお
   見たことない
   あんなかなしそうなおかあちゃんのかお見たことない
   しぬくらいたたかれて
   「こんな子 うちの子とちがう でていき」
   おかあちゃんはなきながら
   そないいうねん

   わたし ひとりで出ていってん
   いつでもいくこうえんにいったら
   よその国へいったみたいな気がしたよ せんせい
   どこかへ いってしまお とおもた
   でも なんぼあるいても 
   どこへもいくところあらへん
   なんぼ かんがえても
   あしばっかりふるえて
   なんにも かんがえられへん
   おそうに うちへかえって 
   さかなみたいにおかあちゃんにあやまってん
   けど おかあちゃんは
   わたしのかお見て ないてばかりいる
   わたしは どうして
   あんなわるいことしてんやろう
   もう二日もたっているのに
   おかあちゃんは
   まだ さみしそうにないている
   せんせい どないしよう

 ・・・「ほんとうの事を書こうな、安子ちゃん」
 ぼくがそういうと彼女は泣きだしたのだった。母親に帰ってもらって、
 ぼくたちはこの詩を書いた。そう、ぼくたちが書いた。
 ぼくは何もいわなかった。ひたすら安子ちゃんと向き合っていただけであった。
 彼女は一字書いては泣き、一行かいては泣いた。
 幼い少女が自らの中に刃を向けている。
 そして、不屈の人間を作り上げた。・・・・・